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開業率日本一、福岡市長のVB支援

東京中心だったベンチャー育成の動きが地方にも広がりつつある。創業支援を政策の柱に掲げ、国家戦略特区に選ばれた福岡市は、ベンチャーを対象にした法人市民税の免除など規制緩和策を次々と繰り出す。開業した企業数を前の年の全企業数で除した開業率は全国トップ(7.04%、2015年度)だ。従来型の経済振興策から、地方都市がどう脱皮を図るべきか。高島宗一郎市長に聞いた。
 ――2012年から「スタートアップ都市」を標榜する狙いは何ですか。
 「行政によるこれまでの経済政策はどちらかというと延命措置だったのではないか。ニーズに合わず努力もしなくなった店は助けるよりつぶれたほうがいい。大企業の誘致ではなく、より成長性の高い企業が生まれることがたくさんの雇用を生む。自分の生活が良くなるという感覚を取り戻すためにはスタートアップ企業の成長が必要だ」
 「米シアトルの存在も大きい。福岡市の人口の半分程度で首都でもないシアトルがなぜアマゾン、スターバックス、マイクロソフトを生み出したのか。街の住みやすさは重要な要素で、福岡もコンパクトでリバブル(暮らしやすい)という特徴がある」
 ※クリックすると拡大表示します――これまで一貫して重視していることは。
 「トップが最後までコミットすることだ。施策だけで街は変わらない。施策に加えムーブメントを常に意識している。例えば、スタートアップ関連のイベントには私が時間をつくって出向き、直接メッセージを出している。それが他と違うところではないか」
 ――なぜ他の自治体ではムーブメントが起こりづらいのでしょう。
 「一般的に、政治家はいわゆる財界や既得権を守る団体と付き合う傾向がある。選挙運動もそういうところにしか行かず、彼らに配慮するようになる」
 「選挙が弱い首長にとっては、スタートアップのような新規参入をしやすくする施策は自分の首を絞めることになるからできない。例えば、タクシーのライドシェア(相乗り)サービスの実証実験をしようとすれば、タクシー業界から反発を買ってしまうだろう」
 ――スタートアップのムーブメントで工夫していることは。
 「コミュニティーづくりから始めるため、一緒に飲むなどして地道に関係を構築してきた。時間を割いて起業家たちと接する機会を増やしてきた。大企業の社長に1時間費やしても彼らは変化しないだろうが、ベンチャーの人たちはそうではない。私と1時間話せば彼らは変わる可能性がある。同じ1時間でも、使う意味があるのはベンチャーに対してだ」
 「14年に創業支援拠点『スタートアップカフェ』を街中に開いた。市役所の経済関係の窓口に拠点があっても、そんな制度ができたことを誰が知るだろうか。チャレンジャーが公務員にそんな相談をしにやって来るのだろうかと考えた。彼らが自分に酔えるようなおしゃれな場所にすることを目指し、モチベーションが上がるようなイベントもやってきた」
※クリックすると拡大表示します ――創業支援で仏ボルドーや台北と連携するなど国際交流も盛んです。
 「日本のマーケットだけでは発展するわけがなく、はじめからグローバルを想定していた。ベンチャーがたった1社で国境を越えるとなると大変だ。現地の行政の後ろ盾があれば安心して取引できる。海外企業も福岡に呼び込める。エストニアのIoT企業がスタートアップ法人減税を活用した事例もある」
 ――変化の激しいスタートアップ企業の支援は、保守的とされる公務員には難しくありませんか。
 「13年にスタートアップ支援を重点施策の1つに盛り込んだ。市職員は首長のマスタープランを重視しており、そこに明確に位置づければついて来てくれる。そして優秀な人たちを重点分野に配置する。昨日と同じことを着実にやる職員も大事だが、昨日と違うチャレンジにモチベーションを感じる職員も大事だ」
 「スタートアップ企業は官に頼らず自らの手で時代を切り開きたいと思っているものだ。ただ福岡市ではその上をいきたい。ベンチャー側も、官民連携だからチャレンジでき、誇りに思ってもらえる関係になっている。ここまでの官民連携ができているモデルはないと自負している」
※クリックすると拡大表示します ――地方にリスクマネーを呼び込んでベンチャーを成長させるためには、どのような方策がありますか。
 「福岡で言えば、投資したい人は東京にも多いが、どこに投資すればよいかわからない課題があった。このため17年4月にベンチャー支援施設『フクオカグロースネクスト』を新たに設けた。ここに来れば投資すべき案件もわかるはずで、新規株式公開(IPO)も出てくるだろう。福岡ではまだ裾野を広げている段階で、これから高さを上げていくためにロールモデルを作っていきたい」
――地方で成長した企業が東京に引っ張られるリスクがあります。経営環境も東京の方が有利なのではありませんか。
※クリックすると拡大表示します 「東京と福岡市で取り合いになる時点で地方としては『勝ち』と言えるだろう。東京と比較すると、明らかにビジネスコストは安い。東京では埋没していても、福岡なら活躍できる人もいるだろう。牛の尾より鶏の頭になるおもしろさがあり、やりがいを感じやすいのは福岡だ」
 「同じ投資額で失敗できる回数は多い。『ベンチャーの育成は東京しかない』という時代を変えていくのが福岡市の役割だ」
(聞き手は西部支社 新井惇太郎)